心エコー図検査

慶心クリニック顧問  赤石 誠

心エコー検査とは、超音波を使って、身体の中の心臓の動きをリアルタイムに観察し、
心臓の病気を診断する検査です

心エコー検査の実際

暗い部屋に入り、上半身を露出していただきます。そして左側臥位になっていただき、検査を行います。
これは、心臓をできるだけ胸壁に近づかせるためです。30分近くこの姿勢をとっていただくので、痛いところやしびれなどがありましたら、遠慮なく検査実施者にお伝えください。胸部に探触子という小さな筒状の機械を当てて、そこから超音波を体の中に投射します。超音波の出力は小さく、電磁波を出すこともありませんので、身体への悪影響はありません。
探触子を、胸部に当てて、心臓をあらゆる角度より観察し、記録します。探触子を軽く押し当てるため、少々痛みを感じることがあります。我慢できない場合には、遠慮せずに検査担当者にお伝えください。肺や骨の影響を避けるため、息を止めていただくこともあります。

所要時間

検査時間は30分程度ですが、病気の種類や患者さんの状態などによって、もう少し時間がかかることがあります。

検査を受ける前の注意

特に、検査のために準備することはありません。ただし、上半身を露出していただきますので、上下が分かれた服装が望ましいと思われます。食事の制限はありません。薬も通常どおり内服してください。

心エコーの歴史

心エコー図は、心臓病の診断においてなくてはならない診断法の一つです。超音波を用いて生体の内部を観察し、病気を診断しようという試みは、昭和25年(1950年)頃から、始まっていたと言われております。頭蓋内や乳腺の組織診断への応用が最初であったそうですが、拍動する心臓にも応用できないかということで、研究開発が進みました。1965年頃には、心臓の弁の動きの信号から病気の診断をするという試みが普及し、1972年には、初めて2次元画像が発表されています。しかし、まだまだ、日常臨床には程遠い診断装置であったようです。しかし、画像の質は急速に改善され1975年頃には、拍動している心臓をリアルタイムで観察することができる技術が開発されたのです。心電図以来の心臓病診断の革命と言われたそうです。私が、医学部に入学したのが1972年で、卒業が1978年ですから、まさに心エコー図は私の医師としての成長とともに発展した診断技術と言ってよいと思います

心エコーの蘊蓄話

物体に当たって撥ねかえってから耳に入ってくる音をエコーと言います。「こだま」とか「やまびこ」、「反響」は、エコーのことを指します。このエコーを利用したのがエコー検査です。実際には、耳に聞こえる音ではなく、耳に聞こえない超音波のエコーを用いて検査を行っています。ですので、心エコー検査(echocardiography)は、別名、心臓超音波検査(cardiac sonography)とも言います。
超音波とは周波数が20kHz以上のきわめて高い周波数の音のことをいいます。心エコー検査で用いられているのは1000kHz以上すなわち1MHz以上の超音波です。この超音波を身体の内部へ投射し、心臓に当たって反射してくる信号を受信して、画像を作るのが心エコー図検査の原理です。それに加えて、反射した時に、反射物体が動いていると、その物体の移動速度に応じて、超音波の波長が変化する現象(ドプラ現象と言います)も併用して、物体の動きや血液の流れを診断しています。

心エコーとほかの臓器のエコーの違い

心エコー図検査といわれていますが、上述のように、もともとの心エコーは検査法ではなく、診断法であったのです。見たかったものを見て、診断するという行為は、見えなかったものを見つけるという診断行為とは異なっていたのです。心臓のエコーは、心臓の中に異常なものが出現したことを見つけるという診断法ではありません。心臓の動きのぎこちなさを判断して病気と診断する技術です。言ってみれば、ダンスを踊っている踊り子を見て、その踊り子の体調を見抜く技術のようなものです。ほかの臓器のエコー(超音波)診断)では、臓器の中に異常構造物が出現したとか、構造物の形態が異常であるということから診断します。しかし、心臓のエコーは、心臓の動きを見て診断する技術なのです。そのために、複雑な計測や、動きの評価が重要になります。

心エコー検査でわかるもの

心不全があるか?

心臓が正しく機能しているか否かを診断します。つまり心臓が所定の能力を出しているか、性能チェックができます。これは、静止している画像からは判断できないことなので、心エコーでなくてはわからないことです。階段を昇ると息苦しい、胸苦しいという症状は、心不全の場合と、狭心症の場合があります。狭心症の診断は、心エコーよりも丁寧な問診が重要ですが、心不全の診断には心エコーが役立ちます。
心臓に悪影響を及ぼす可能性のある抗がん剤を使用する際に、心臓の機能に障害を与えているか否かを見るために心エコーはとても役立ちます。

弁膜症があるか?

高齢になると、大動脈弁という弁が加齢による石灰化変性のために開かなくなり、大動脈弁狭窄という病気になります。高齢化とともにこの病気は増え続けています。また、僧帽弁の異常も稀ではなく、このような弁膜症の存在は、心エコーでわかります。さらにどのくらいの重症度か、手術が必要なのかということも心エコーでわかります。

心筋梗塞があるか?

狭心症は心エコーで診断することはできません。しかし、心筋梗塞が存在することや、心不全を合併していることは、心エコーでわかります。また、頸動脈をエコーで観察することにより、動脈硬化が全身の血管にどのくらい広がっているかを推定できます。

不整脈

高齢者に多くみられる不整脈は、なんといっても心房細動です。心房細動は、快適な生活を妨げたり、心不全を引き起こしたりする病気です。さらに、心房細動が持続すると左房の中の左心耳という部位に血栓ができて、それが全身に流れ、脳梗塞や重大な臓器の梗塞を引き起こします。心房細動がある人は、ない人に比べて脳梗塞が5倍なりやすいと言われています。左心耳内の血栓がないか、心房細動を引き起こす心臓病がないかを心エコーで検査することは重要です。

心電図異常

心電図で異常が見られた場合には、心臓肥大を呈する肥大型心筋症、知らないうちに起きてしまった無症候性心筋梗塞、不整脈をきたす心筋の病気(拡張型心筋症や心サルコイドーシスなど)が隠れていないかを心エコーで調べることが可能です。さらに、生まれたときから存在している心臓病(先天性心疾患)が見つかる時もあります。心房中隔欠損、修正大血管転位、エプシュタイン奇形は、心電図異常の精密検査を行っている時に見つかることがある疾患です。

そのほか

心エコーではそのほかに、とんでもない病気が見つかることがあります。稀だけれども、重大な病気として、心臓の悪性リンパ腫、心膜炎、心筋症、感染性心内膜炎、心臓の腫瘍である粘液腫などがあります。